Easy Exercise

勉強したこと、見つけたことのメモ。

この前のブログに書いたやつが "zeta polynomial" だった件

以前の記事

oddie.hatenablog.com

[m]_q^{(n)} という組合せ量を定義しました。これは有限体 \mathbb{F}_q 上の n 次元ベクトル空間 \mathbb{F}_q^n における部分空間の列

\begin{split} 0 = V_0 \subset V_1 \subset \cdots \subset V_m = \mathbb{F}_q^n \end{split}

の個数に等しいものでした。

この記事を書いてからしばらくして、たまたま読んでいた文献 [1] に載っていた zeta polynomial というやつがこれの一般化になっていることに気づきました!!

定義 P を有限半順序集合とする.P における長さ n の multichain x_0\leq x_1\leq\cdots\leq x_n の個数を Z_P(n) とおき*1P zeta polynomial という.

 

Z_P(n)n多項式であることは、等式

\begin{split} Z_P(n) = \sum_{k=0}^d b_k \binom{n}{k} \end{split}

からわかります。ここで b_kP の長さ k の chain x_0\lt x_1\lt\cdots\lt x_k の個数で、dP の最大の chain の長さです。

P として \mathbb{F}_q^n の部分空間のなす半順序集合をとり、x_0=V_1,x_1=V_2,\cdots,x_{m-2}=V_{m-1} と対応させると、

\begin{split} [m]_q^{(n)} = Z_P(m-2) \end{split}

だったわけですね。

ちなみにこの zeta polynomial は、半順序集合の隣接代数(かなり雑に言えばグラフの隣接行列みたいなやつのなす代数)におけるゼータ関数というものと関係がありますが、Riemann ゼータ関数とかのゼータとは多分直接の関係はなさそうに思いました。

隣接代数のゼータ関数という名前の由来は、隣接代数のゼータ関数が隣接代数における Möbius 関数の逆元になっていることが、Riemann ゼータ関数の逆数は Möbius 関数の Dirichlet 級数であることに似ているのと大きく関係していそうに思います。

追記:隣接代数のゼータ関数の記事を書きました。

oddie.hatenablog.com

この中で zeta polynomial との関係についても解説しています。

参考文献

[1] Richard P. Stanley, Enumerative combinatorics, vol.1 (pdf)

[2]  https://ncatlab.org/nlab/show/zeta+polynomial (2019年12月30日閲覧)

*1:[1] では P における長さ n-2 の multichain x_1\leq x_2\leq\cdots\leq x_{n-1} の個数としている.この定義は [2] によった.